笑の大学と今川焼き | くうねり庵(ほぼ閉鎖状態)

笑の大学と今川焼き

 昨日見た映画『笑の大学』は、笑うことが不謹慎なこととされた時代に喜劇で人を笑わせようとした作家と、笑いをこの世から排除しようとする検閲官との戦いを描いた物語でした。その結果として残されるのは、完璧な喜劇の台本と作家の元に届いた召集令状なのですが…
 ほぼ90%が取調室の場面。しかも相手は検閲官ですから「吐いてすっきりしちまいな。カツ丼でも食うか?」なんてこともありません。しかし「くうねり庵」はいちおう食い物系ブログなので食べ物の話をせねばなりません。

 食べてる場面こそなかったものの、この映画には「今川焼き」が重要な小道具として出てきます。稲垣吾郎演じる喜劇作家が何気なく今川焼きを買ってくるのです。それを見て、役所広司の検閲官が「自分は賄賂で態度を変えるような人間ではない」と激怒する。
 その先のやりとりが見物です。気の弱そうな劇作家は、あわてて今川焼きを持ち帰ろうとしますが、そこへ検閲官の手が伸びてくる。
「まだ温かい」
「買ってきたばかりですから」
「どこの店の」
「雷屋…です」
「…うまい店をご存じだ!」
 検閲官はどうやら今川焼きが好きなのです。でも自分にくれとは言わない。母が好きでね、などと取って付けたような世間話をしながら脚本に目を走らせる。なのに作家が今川焼きを鞄にしまおうとすると制止する。
 言葉だけでなく、役者の表情や動きにいたるまで、すべてに張りつめた緊張感。でも戦いの中心にあるのは今川焼き。今川焼きは袋に入ったままで一度も姿を現しませんが、検閲官と作家の運命的な出会いを強烈に印象づけてくれます。


今川焼き関連で、こんなサイトを見つけてしまいました
二重焼き
 二重焼きとは今川焼きのことだそうです。どんな食べ物なのか、地方ごとに違う呼び名にはどんなものがあるのか、自作法まで書いてあります。